2015/04/06

ジミー・グラハムさんを棄てた母と救った母

ジミーさん、ハンサム。そして、ちょっとたれ目で、優しそう。しゃべり方もソフトだし、ぜったいいい人に決まってる・・・。

フットボール選手のインタビューを聞いていると、大変な子ども時代を送ってきた人がたくさんいるのですが、ジミーさんもその一人です。 

小さいころ、お母さんの前夫(ジミーさんの義理の父)と二人で暮らしていたことがあるそうです。お母さんは、ジミーさんの養育費として、前夫に月98ドルを渡していたのですが、ある時からお母さんが支払いを拒否。前夫は、迷うことなく、ジミーさんを市役所の福祉課の玄関に置き去りに・・・。 

「小さい頃は、よく思ったよ。オレの価値ってどのくらいかな?ってさ。98ドルか・・・。フッ、それくらいだったんだ。」 

そのあと、お母さんに引き取られて、2年ほど暮らしていたのですが、11歳のとき車に乗せられ、連れて行かれたのは孤児や非行少年が暮らす施設。お姉さんが「やめて、お母さん!」と泣き叫ぶ中、ジミーさんは車の外に出されて車はロックされ・・・。 

「悪い夢かと思ったよ。これがオレの人生かよって。そんなわけない、こんな悪夢は覚めるんだって思ったけど、覚めなかったよ・・・。」

 その施設でジミーさんは最年少。年上の少年たちにいじめられ、集団暴行をうけ、3日も目が開かないほど殴られたこともあります。 

「母さんに電話したよ。母さんもつらかったのかもしれないけど、電話はすぐ切れた。11歳じゃ、泣くしかできないのさ。毎晩泣きながら眠ってた。」

 9ヵ月後、やっとお母さんが引き取りに来てくれたのですが、今度はお母さんの新しいボーイフレンドから暴行を受けるようになります。お母さんはそんなジミーさんをほとんど放りっぱなしでした。 

そんな中、ジミーさんは教会でボランティアをしていたベッキーさんと会うことになります。 

「外はマイナス6度なのに、ジミーったらショートパンツにタンクトップで来てたわ・・・。」

 数ヶ月たったころ、お祈りのグループの中で、ジミーさんは泣き出してしまいます。ボク、不安なんだ。お母さんがまたボクを施設に入れてしまうかもしれないって。怖いんだよ・・・。 その話を聞いて、ベッキーさんはジミーさんを引き取ることに決めました。

「だって、助けないわけにはいかないじゃないの。普通のことだわ。放っておけるはずないでしょう。ジミーに言ったの。お母さんに電話して、私のうちに来てもいいか聞いてみましょうって。」

 ベッキーさんは、小さい子どもが一人(コリーナさん)いるシングルマザー。看護学校に通っている最中でした。経済的に厳しい状態の中、もう一人子どもを育てることにしたのです。 

「ブリキの缶みたいなトレイラーに住んでたんだ。冬なんか寒くてさ、服をあるだけ着て、ジャケット着てパンツはいて、みんなでストーブのそばで寝てたんだ。でも、家族一緒だった。ベッキーとコリーナと」と、ジミーさん。 

ベッキーさんの就職後は経済的にも安定しました。ジミーさんの成績も伸び、AやBをとるようになり、バスケットボールの奨学金をもらってマイアミ大学に進みます。そして、卒業式のときには、ジミーさんのお母さんが姿を見せました。 

「時間がかかるけど、仲を修復できたらいいね。母には言ったよ。今ままでのこと、許せるけど、でも忘れることはないって」

 ベッキーさんは言います。「ジミーのおかげで私もちょっといい人間になれたかな」

 「14歳のときのオレはひどかったよ。引き取り手なんかどこにもないようなやつだったんだ。近づこうとする人なんていなかった。それを、ベッキーが手を差し伸べてくれたんだ。1パーセントしか望みがないようなやつを引き取って、それを100パーセントにしてくれたんだ。」

 ベッキーさん、素晴らしい・・・。そしてジミーさん、よかったね・・・。 今も、小さいときのジミーさんのような子どもが世界中にたくさんいることでしょう。 ジミーさんは言っています。

「どこにも行き場がない、って思うことがあるかもしれない。でも戦うんだ。そして自分の運命を変えるんだ。」


 

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