2016/04/14

元NFL選手ウィル・スミスの死とタイラン・マシュー ニューオーリンズの深い闇

先週の土曜日、元ニューオーリンズ・セインツの選手ウィル・スミスさんが射殺されるという事件がありました。

レストランで食事をしたあと、スミスさんは奥さんと友達夫婦とともに、車に乗りました。前を走っていたハマーが急に止まったので、スミスさんは急ブレーキを。衝突はしなかったとスミスさんは思いました。ハマーは路肩に動きましたが、身の安全を考えて、スミスさんはそのまま運転を続けました。すると、ハマーはスピードを上げて走ってきて、スミスさんの車後部に衝突。

スミスさんは車を降りて、ハマーの運転手と怒鳴り合いになります。そして、ハマーの運転手が、スミスさんを射殺。スミスさんは8回撃たれ、そのうち7回は背中から撃たれたと警察が発表しています。

最初は、ロードレイジ (road rage =車の運転中にカッカして、過度な暴力をふるうこと)の事件だと思いました。しかし、この裏には、もっと大きな問題が。

まず、アリゾナ・カーディナルズのタイラン・マシュー選手が、ツイッターに連続投稿。

「知ってる、コイツ。皆に嫌われてる卑怯者だ。大人になって殺人をするとは思わなかったが・・・卑怯者に正当な刑罰が与えられますように・・・」

「オレだって、撃たれたことくらいある!だけど、銃をとって、相手を撃とうなんて思ったことはない。争いは、たくさんしたけど、そんな」

「誰かを殺すなんて。オレは卑怯者じゃない。命がどんなに大切なものか、オレは知ってる。ひとつしかないじゃないか!それを誰かから奪うなんて」

タイラン・マシューさんは、ニューオーリンズ出身。このツイートの後、スミスさんを殺害した犯人の親戚から、脅迫を受けました。「脅迫って、オドシじゃないよ。殺人予告ってことなんだ」とインタビューで語っていたマシューさん。


ESPNの解説者をやっている元NFL選手、ライアン・クラークさんも、ニューオーリンズの現状について、語っていました。ニューオーリンズに行くことがあっても、ホテルからは出ない。誰にぶつかって、どんな争いになるかもしれないから。コミュニティが壊れている。貧困層は放り出され、銃と麻薬と暴力が蔓延している。

「家(ニュー・オーリンズ)に帰っても、2日以上はいられない。誰がどこにいて、何をしてるか、みんな知ってる。見つけられるんだ。やつら、わざとぶつかってきて、ケンカを始める。やつらが最初に考えるのは、殺してやるってことなんだ。なんで、とか、どうする、とか、話し合うことはない。あいつらは、銃をぶっ放したいだけなんだ」

と、インタビューで語っていたタイラン・マシューさん。

さらに、ニューオーリンズ・セインツのヘッドコーチ、ショーン・ペイトンさんも、「この街は崩壊しているんだ」と語ります。「この問題は、私たち市民の小さな秘密だったんだ。観光産業に傷をつけたくはない。だけど、現状は、西部劇みたいなもんだよ」

ペイトンさんは、交通事故にあうことが心配なのだと言います。もし、事故にあい、警察の出動が遅れたら。もともと人手の足りない警察官。バンパーをぶつけたくらいの事故は後回しにされるだろう。もし、相手が銃に手を伸ばしたら。「自分は安全運転してるつもりだけど、間違って、誰かの車の前に割り込むことがあるかもしれない・・・」

そして、殺されたスミスさんですが、今年からセインツでコーチの見習いを始める予定になっていたそうです。「いいコーチになれたはずなんだ。ディフェンスコーチだけじゃなくて、ヘッドコーチになれる資質があったと思う。残念だ」と、ペイトンさん。

タイラン・マシューさんのツイッターの続き。

「詐欺師みたいな政治家を追い出して、子どもだちに、建設的な、何かすることを与えないと、暴力が大きくなっていくだけだ!」

「オレが子どもだった時みたいに、公園で遊ぶこともできない。草はぼうぼうだし、バスケのリングにはネットがはってないんだ。ネットどころか、リングさえない・・・」

「教育、レクリエーションなんかの予算削減。子どもたちが成功するために、かかせないものだろ!」

十分でない福祉政策。教育機関への削減。見捨てられた貧困層。行き場のない子どもたち。将来に希望が持てなくて、麻薬・暴力にはしる若者。その繰り返し。

だって、スミスさんを撃った犯人だって、なんでそこで銃を出す?自分が捕まるの、分かりきってるじゃん。捕まってもいいって思ってるんじゃん。別に刑務所に入ったっていいよ、ハマーに乗ってんのと別に変わんねーよって思ってんじゃん。オレが死んだって、他の人が死んだって、世の中がどうなったって、知るか!って思ってるんだ。

テレビで、犯罪を犯した10代の男の子のインタビューを見たことがあるよ。子どもだったら、将来はスポーツ選手になりたいとか、パイロットになりないとか、いろいろあるのに、その子は「オレは刑務所に入るんだなって、小さい頃からずっと思ってた」って。

そんな、なんの希望もないようなところに生まれてきたら、どうするよ?

スミスさんを撃った犯人は28歳。高校でフットボールをしていて、その地域では有名で、父親は38歳で警察に撃たれて死亡したとニュースにありました。

そしてこのニュースを読んでる時に、サイドバーに、警察の署長だか市長だかが「この事件は街の安全性を反映するものではないと語った」っていうヘッドラインが出ていて、ワタシはあきれました!!!!政治家ってどこでも同じだな!!!

ニューオーリンズって、どんなところかしらないけど、シカゴもデトロイトも行ったことないけど、どこでも、アメリカの都市では、こんな状況が当たり前になっているのではないでしょうか。

そして銃の問題もあるし。

スミスさんの車にも、弾が入った銃があったそうです。スミスさんは携帯許可を持っていたそうですが。でも、誰でも銃をもてる社会って?オンラインとかガレージセールでライフル(ピストルじゃないよ散弾銃だよ)を買える社会って?小学校で銃の乱射事件があれば、銃を取り締まるって方向に行かずに、いや、学校の先生に射撃練習させればいいんじゃね?って真面目に討論するアメリカ社会って?

どうすんの?ねえ、どうする?

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