2017/01/29

ベリチック式コーチ法:トム・ブレイディ<ジョニー・フォックスボロ

ニューイングランド・ペイトリオッツは、今年で6年連続AFCチャンピオンシップ戦に出場。すごいですね~。ビル・ベリチックコーチとQBトム・ブレイディさんが組んでから、スーパーボウルへの出場は今回で7回目。そのうち4回は優勝しています。は~すごいですね~。

コーチがすごいのか、それともQBがすごいのか。NFLの最強ペア。そのふたりの練習風景がチラッと垣間見える記事がありました。いや、ベリチックコーチが選手に厳しいというのは聞いていましたが、どうやらトム・ブレイディには人一倍辛らつにあたるらしい。いつでも、真っ先にこきおろされるのは、まずQB・・・。

そんな話を、ペイトリオッツに在籍していた選手たちが語っていました。ちょっと一部だけ紹介してみます。


◆2005年8月トレーニングキャンプ:WRディオン・ブランチ

ペイトリオッツは前年3度目のスーパーボウル優勝。ブランチさんがMVPに選ばれ、その前2回はトム・ブレイディさんがMVPとなっています。トレーニングキャンプ中に調子よくパス&キャッチを決め、3日間で50回はパスをコンプリートしていました。それが気にくわなかったベリチックコーチは・・・

「おい、よく聞けマザーファッカーども。もうパスを投げるな。他のヤツに投げろ。このあと2日はディオンに投げるんじゃない」

ちょwwいきなり選手をマザーファッカー呼ばわり!唖然とします。しかし、これ一発でコーチの姿勢をズバリと伝えていますよね。冗談じゃないんだぞ、と。ブレイディさんは、2人のパスを完璧なものにしたいのだと反論しましたが、コーチは聞く耳を持ちませんでした。

「トムは2日間オレにはパスを投げなかった。コーチの意図を理解していたんだ」

とブランチさん。その年、ブランチさんはQBが放ったパス530のうち78をキャッチ。ナンバーワンターゲットではあったものの、他の選手も満遍なくパスをキャッチしました。

◆2002年9月:WRディオン・ブランチ

第4週でペイトリオッツはチャージャースに21対14で敗戦。普段以上にパスを投げた試合でした。その後、ミーティングでは選手をにらみつけながら、こう言ったベリチックコーチ。

「オレたちは50回もパスを投げるようなチームじゃないんだよ、くそったれが。もうこんなことはするな。オレたちのやり方じゃない」

一番にらまれていたのはブレイディさん。そりゃあQBだから自分のスタッツをよくしたい。しかし、ペイトリオッツの戦術は「パスを平均30回、あとはラン。固いディフェンスで勝つ」というのが基本でした。

「トムは腹を立てていた。若かったからね。マジで言ってんのかよ?って顔をしてた。だけど、次の週に投げたパスは30くらい。本来のやり方に戻ったのさ」

◆2007年シーズン最初のミーティング:WRドンテ・スタルワース

前年のペイトリオッツは、AFCチャンピオンシップで敗退。前半21対6のリードから逆転負けを喫しました。ミーティングはその反省から始まり、前シーズンのQBトム・ブレイディ最悪のプレイがフィルムに映し出されます。

「この投球はいったい何だ?そのへんのジョニー・フォックスボロだって、これよりいいパスを投げられる。彼を呼んできたっていいんだぞ」

と嫌味たらしく語るベリチックコーチ。フォックスボロはペイトリオッツ本拠地の地名です。「フォックスボロ高校でQBをしている高校生」という意味で「ジョニー・フォックスボロ」が使われています。MVPブレイディに向かって「高校生のほうがお前よりマシだ」と皆の前で言い放つコーチ。

「もっとひどい言葉も使っていたよ。オレと隣に座っていたランディ(・モス)は顔を見合わせて背筋を伸ばしたな。トムがこんなふうに言われるなら、安全なヤツはどこにもいない。ルーキーや有名なフリーエージェント選手もその場にいたんだが、これで全員がコーチのやり方を理解した。でも、ブレイディは挑戦が好きだからね。こんなの何とも思っていないよ。むしろ喜んでいたんじゃないかな」

◆2007年秋、練習:WRランディ・モス

QBとの5ヤードパスを練習していましたが、なぜかキャッチできない。次の日、ベリチックコーチがフィルムを見せて言うことには

「バカにしてんのか?どっかのオールプロレシーバーとオールプロクォータバックが5ヤードパスをコンプリートできないと?おい、トム。近所の高校生QBを連れてきて、5ヤードパスを見せてやろうか?」

皆の前でQBに屈辱的な言葉を吐くコーチに、チーム全員が息を呑みました。ランディ・モスさんはペイトリオッツが三つ目のチームで、この年が移籍1年目。

「聞いたことはあったが、実際に見たことはなかった。だけど、これこそ自分がヘッドコーチに求めていたものだ。勝つチームに行きたいとずっと思っていたんだ。それまで自分に欠けていたこと、これだという感触をペイトリオッツで得ることができた。短い時間だったが」

2007年11月:Cダン・コペン

ペイトリオッツはここまで10連勝。対ビルズ戦56対10で勝利の後、月曜日のミーティングで。

「50点も入れたんだから、いい気分でミーティングに参加したんだ。だけどコーチは、小さなミスを全部拾ってきて、みんなに見せつけた。長い時間をかけて。トム・ブレイディだって53人のロースターの誰だってお構いなしだ。ミーティングが終る時には、負け試合だったかのような気持ちになっていた」

◆2009年 2回目のミーティング:QBブライアン・ホイヤー

ブライアン・ホイヤーさんは、この年ドラフト外でペイトリオッツに入団しました。以後、バックアップQBを3年務めることになります。ベリチックコーチは、前日練習でのミスを指摘することで有名だったそう。初日の練習が終った、2日目のミーティングでのこと。

「部屋に入るなり電気が消えてフィルムが映ったんだ。前日の練習でのトムが映っていた。今でもはっきり覚えている。20~30ヤード先の(ウェス・)ウェルカーに投げようとしていた。5ヤードのヒッチルートはオープンだった。ベリチックはこう言ったんだ。

『ブレイディ、何年プレイしてるんだ?遠くの方にいる小人に向けて、パスを無理やり出すとは、どういうつもりだ?ランニングバックが5ヤードのヒッチでオープンになってるんだぞ。ファーストダウンだ。そうやって進んでいくんだ』

それを聞いて、こう思ったんだ。オレがチームに残れるワケない。コーチがこんな風にトム・ブレイディを扱うなら、オレなんか絶対無理だろって」

ホイヤーさんwwずいぶん謙虚wでも、ルーキーの2日目ですからね。そりゃあ驚いたことでしょう。ウェルカーさんだって(今、調べてみたら身長175cm)「小人」とか呼ばれてるwwひどいコーチw

ホイヤーさんはペイトリオッツを含め6チームを経験し、今年はシカゴ・ベアーズ所属でした。このビデオにも登場しています。2011年12月のワシントン・レッドスキンズ戦。トム・ブレイディがエンドゾーンでインターセプトされた直後の様子。




怒鳴り合いマッチのオフェンシブコーディネーターとトム・ブレイディさんを仲裁しようと、ぶかぶかコートで2人の間に入るホイヤーさんww

「2分後には、何もなかったようにふたりで次のオフェンスを話し合ってた。他の人には理解できないかもしれない。本気でやってるんだよ。コーチは躊躇なんかしない。だからいい選手になるんだ。かなり緊迫した状態になっても、トムはいつも理解して受け入れている」

これが強さじゃないでしょうかね、ブレイディさんの。自分の力が向上するならば、どんな意見でも受け入れる。厳しくコーチしてもらうことに感謝している。いくら辛らつな言葉を投げられても。

他のNFLコーチもベリチックさんみたいにコーチするのかといえば、そんなワケはないでしょう。あるAFCチームが、同じような方法をとってみたそうです。主力選手のミスをフィルムで見せ、反省を促してみたと。そうしたら、大型契約を交わしたばかりのベテラン選手が、皆の前で立ち上がってコーチに怒鳴り返したということです。

うーん、そうかもしれません。NFLの花形選手なんてエゴ強そう・・・。とすると、トム・ブレイディさんなんて、結構謙虚な人なのかも。競争心は人一倍強いんだろうけど。

「彼は私たちに高い要求をしてくる。もし私たちがそれに応えられない時には、はっきりとそう知らしめてくれる。10年選手だから、2回プロボウルに選ばれたからといって、見過ごされることはない。そんなことは彼にとってはどうでもいいことだ。これからもそれは変わらない」

とは、ベリチックコーチを評するトム・ブレイディさんの言葉。

こういう関係も、なんかすごいですよね。2人だけの世界ってかんじ・・・。

2 件のコメント:

  1. たけまわた2017/01/31 5:34

    Hanaさん、以前ベネット兄弟の記事でお邪魔させていただきました。
    チャンピオンシップ、終わってしまいましたね。両試合ともハラハラ感の無い、ワンサイドゲームでちょっぴり残念でした。
    ところで、ベリッチックHCの記事、興味深く読ませていただきました。確かに現在のHCの中では抜きんでていると、随所に感じられます。
    たとえば、AFCチャンピオンシップでワンハンドキャッチの特集をやっておりこれに否定的なHCは保守的なコメントを残していましたがベリチックは、有効な手段であれば取り入れるというようなことを語っていたと思います。非常に勝ちに対して貪欲でかつ既存の考え方にとらわれず周りに流されないという姿勢がよく表れていると思いました。そして、この人の率いるチームにはそらー勝てんわと思わされました。
    またお邪魔するかもしれないのでよろしくお願いします・・・

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    1. こんにちは!お久しぶりです。
      ワンハンドキャッチの話、知りませんでした。そうなんですか。どっかで探して見てみます。
      スーパーボウルではベリチックさんがどんなふうにファルコンズオフェンスに対処するかがすごく楽しみです。いい試合になるといいですね~。
      またよろしくお願いいたします。

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